
PwCを辞めた理由を聞かれることがあります。 仕事が嫌だったのか。人間関係に問題があったのか。忙しすぎたのか。
どれも、主な理由ではありません。
人には恵まれていました。同期には、今後も長く付き合いたいと思える人が大勢います。PwCで身につけた思考力や仕事の基準は、現在の経営にも生きています。
それでも私は、PwCを辞めました。
本当の理由は、会社員として得られる給料と自己成長に、限界を感じたからです。

上に進んだ先に、自分の望む未来がなかった
コンサルティングファームでは、経験と評価を積み重ねると、シニアアソシエイト、マネージャー、シニアマネージャーと昇進していきます。
役職が上がれば、給料も増えます。ただ、責任と労働時間も増えていきます。
私が見ていた範囲では、上位職の人ほど会議に追われていました。 平日の朝から夜までカレンダーが埋まり、30分の時間を確保することにも苦労する。夜や休日にも仕事をしている。
役職が上がるほど、働いた時間に比例して給料が増えるわけでもありません。時給という考え方をすれば、昇進後の方が割に合わないように見えることもありました。
もちろん、責任のある仕事にやりがいを感じ、コンサルタントとして上を目指す人もいます。その選択を否定するつもりはありません。
ただ、私はその姿を見て、自分も同じ場所へ行きたいとは思えませんでした。 忙しく働いた先に、自由な時間と大きな裁量が待っているわけではない。役職が上がるほど、組織、顧客、売上に対する責任は重くなります。
昇進の先にある未来が、自分の望む成功とは違っていました。
役員になっても、楽しそうには見えなかった
コンサルタントとして、私は三社ほどの上場企業に深く関わり、役員の方々と仕事をしました。
会社員として見れば、役員はキャリアの到達点の一つです。大きな組織を動かし、報酬も社会的な立場も得ている。
それでも、私が接した方々は、毎日を心から楽しんでいるようには見えませんでした。
もちろん、仕事中の姿だけを見て、その人の人生や幸福を判断することはできません。
ただ、長い時間をかけて会社の中を上り、責任ある立場に就いた先にも、私が欲しい自由はないのだと感じました。
若手社員の頃は、昇進すれば決定権が増え、自由になるように思えます。実際には、権限が増えると同時に、背負うものも増えます。
さらに上を目指しても、昇進は実力だけでは決まりません。
上位のポストが空いているか。組織がどの分野へ投資するか。どの上司の下で働くか。周囲との関係やタイミングも影響します。
努力によって確率は上げられても、最後まで自分だけでは決められない。
私は、自分の人生の上限を、組織の都合やポストの数に委ねたくありませんでした。
若いうちは、自分で仕事をつくれない
会社員時代に不満だったのは、単に忙しいことではありません。 自分が取り組む仕事を、自分でつくれないことでした。
若手のコンサルタントは、基本的に与えられたプロジェクトで役割を果たします。複数の候補から希望を出せる場合はあっても、自分が好きな企業へ営業し、自分で条件を交渉し、仕事を取ってくるわけではありません。
案件の方向性を決めるのも、最終的に顧客と合意するのも、営業責任を持つのも上位職です。
シニアアソシエイト、マネージャーと昇進すれば、目の前の仕事に対する決定権は増えます。それでも、どの市場で、誰に、何を売るかを自分で決められるわけではありません。
本格的に営業をし、顧客との関係をつくり、自分の名前で仕事を取る経験ができるのは、さらに上の役職へ進んでからです。 私は、その時を何年も待ちたくありませんでした。
営業力を学びたいと、当時から明確に言語化していたわけではありません。今振り返れば、自分で仕事をつくる経験を早く持ちたかったのだと分かります。
好きな企業に営業する。自分で案件を取り、人を集め、方針を決め、最後まで責任を持つ。 現在の働き方は、会社員時代とは根本的に違います。
会社の看板ではなく、事業の結果で評価されたい
PwCに所属していると、会社の名前だけで一定の信用を得られます。
メールを送り、名刺を渡せば、相手はPwCのコンサルタントとして話を聞いてくれます。個人の能力に加えて、会社が長年築いた信用を使って仕事ができます。
これは、大企業で働く大きな利点です。
同時に、その信用がなくなったとき、自分に何が残るのかという疑問もありました。
会社を辞めれば、組織の看板は使えません。自分で顧客を探し、自分の提案に価値を感じてもらい、自分の責任で仕事を完了させる必要があります。
私は、その環境で自分がどこまで通用するかを知りたくなりました。 学歴や会社名が意味を持つ世界だけでなく、顧客に提供した価値と事業の結果だけで評価される世界を見てみたい。
東大卒でも、PwC出身でも、売れないサービスは売れません。 その厳しさを、自分で経験したいと思いました。
年収5,000万円でも、辞めていた
給料に限界を感じたと書くと、より高い給料を提示されれば残ったのかと思われるかもしれません。
仮に年収5,000万円を提示されていたとしても、私は辞めていたと思います。
もちろん、お金は欲しいです。
自分の実力で豊かになりたい。年収5,000万円よりも、さらに上を目指したいという気持ちもあります。
ただ、会社が決めた役職と報酬制度の中で、高い給料を受け取ることが最終目標ではありませんでした。
自分の好きな領域で、誰にも制限されずに勝負をしたい。自分の判断で会社をつくり、その会社をどこまで大きくできるか試したい。
会社員であれば、報酬の上限は会社が決めます。起業すれば、収入がゼロになる可能性もありますが、上限もありません。
私は、安定した高収入より、自分の実力と事業の成果が直接つながる環境を選びました。 年収5,000万円という数字そのものに不満があるのではありません。 そこが自分の人生の到達点だと、誰かに決められることが嫌でした。
会社員でいるメリットが分からなくなった
会社員には、多くの利点があります。 毎月給料が入り、会社の信用や制度を使えます。大きな組織でなければ扱えない案件もあります。何か問題が起きても、責任を組織で分担できます。
その環境を否定するつもりはありません。 ただ、私にとっては、会社員でいる利点よりも、自分で決められないことの方が大きくなりました。
会社員であれば、基本的には上司や顧客から求められた仕事をします。何を優先するか、誰と働くか、どの領域に時間を使うかを、すべて自分で決めることはできません。
安定と引き換えに、自分の時間と判断の一部を会社へ渡しています。
私は次第に、人の言うとおりに仕事を続けるだけでよいのかと考えるようになりました。 楽ではあっても、自分が望む成長にはつながらない。そう判断した時点で、会社員を続ける理由はなくなりました。
起業して初めて得たもの
今は、海外から日本旅行に関する問い合わせが日々届きます。
自分が興味を持った企業へ営業し、自分で仕事を取り、条件を交渉します。一緒に働く人も、自分で選べます。
特に大きいのは、好きな人と働けることです。
会社員であれば、上司、同僚、配属先、顧客を自分だけで選ぶことはできません。起業後は、誰と長く仕事をしたいかを、自分で決められます。
旅行が好きな私にとって、世界を飛び回ることを仕事にできるのも大きな喜びです。
問題が起きない日はありません。 採用、営業、資金、契約、プロジェクト管理。経営者としての責任は、会社員時代よりはるかに重くなりました。
それでも、PwCを辞めたことを後悔したことはありません。 **今は、毎日が本当に楽しいです。 **

プライベートジェットを買うという夢
将来の夢の一つは、プライベートジェットを買うことです。 単にぜいたく品が欲しいという話ではありません。
世界中を移動しながら仕事をするうえで、時間を最大限に効率化したい。そして、これまで支えてくれた家族や友人に、プライベートジェットでの旅行をプレゼントしたいと思っています。
自分だけが豊かになるのではなく、自分の成功によって、身近な人の経験や選択肢も広げたい。
今のYumeliaから見れば、途方もない目標かもしれません。 しかし、実現できるかどうかを最初に決める必要はありません。
実現するには何が必要かを考え、できるところまで進めばよい。 東大を目指したときも、旅行会社をつくったときも、その考え方は変わっていません。
自分の限界を、自分以外に決めさせない
PwCに残り、そのまま昇進していく人生も、十分に恵まれたものだったと思います。
私はPwCが嫌で辞めたわけではありません。
PwCで描ける未来よりも、Yumeliaで描ける未来の方を見てみたくなりました。
自分の好きな人と働く。好きな領域で仕事をつくる。世界中を飛び回る。旅行業界の古い仕組みをAIで変える。さらに、宇宙旅行を含む新しい市場をつくる。
できる限りのことを試し、自分がどこまで成長できるのかを確かめたい。 会社員として用意された成功ではなく、自分で成功の大きさを決めたい。
それが、私がPwCを辞めて起業した本当の理由です。